ごみと青い岩

富士フィルムニ思フコト

 

富士フィルムの24年3月期決算発表後、若干カメラ界隈でプチ炎上している。

その件について、私もいち富士フィルムユーザーとして思う所があったのだが、意外とネット上では同じような考えの方が見当たらなかったため、少々書き連ねてみた。

今回は長文となります。ご容赦くださいませ。

 

 

 

決算発表でプチ炎上している理由

私自身も「ん?」と思う点だが、他にもネットの意見などをみていくと大体下記3点が 

プチ炎上している理由ではないだろうか。

 

①納期が不明でいつ手に入れられるのか分からない

②①のような在庫状況を適正だと富士フィルムは認識しているようだから

③ライカを引き合いに出しながら、古い機種も含めて価値が高いブランド力を身に着けたいという発言。加えて、その方法が在庫を絞る品薄商法のように受けとれるから。

 

そう、いまフジのカメラは本当に手に入らない。

mall-jp.fujifilm.com

5/12現在、フジの直販サイトで買えるカメラは無いし、他のショップもわずかに1機種くらいであれば在庫がわずかにあったり、というレベル。

 

確かに私自身もこの状況でその発言は不満を爆発させるのでは...と思う反面、致し方ないのかなあとも思う所がある。

それは、私が身を置く自動車業界でも似たような構造を抱える所が多いから。

 

こちらは富士フィルムの売上高における地域別比率。

富士フィルムホールディングス(株) 2024年3月期 決算説明会資料より引用


国内の比率は約35%。

これはヘルスケアなどの全セグメントを含めたもの。つまりカメラを扱うイメージング事業の国内比率は、より低い可能性が高い。

 

しかも、これからさらに少子高齢化が進み需要の減少は避けられないという…。

それでは、そんな絶対数自体も少ない国内市場ってどうなのだろうか?

 

国内カメラ業界全体の傾向 趣味性と高級路線への傾倒

もう4年前になってしまうが、こんな記事を投稿したことがある。

blue-rock53.hatenablog.com

 

当時はオリンパスがカメラ業界を撤退したり、ついにカメラ業界もオワコンなのかという少し暗い雰囲気があった。個人的にもそもそもカメラ業界ってどういう変遷だったのか、気になったから簡単に調べてみたのだった。

 

結果現在のカメラ業界は、1980年よりも前ごろの趣味性が高く、高級路線というカメラが「嗜好品」だった時代に戻りつつあるという結論だった。

そもそもカメラがなじみ深くなったのは、80年代から2010年頃まで一気にカメラの大衆化が進んだから。

 

80年代から90年代中頃まではフィルムのコンパクトカメラが、90年代から2010年頃まではコンデジカメラが、その大衆化の役割を担った。

しかし、以降はスマホの登場で一気にカメラの需要が落ちた。これが現在に至るまでの大まかな流れなのだと思う。

 

実際に成功したフジの戦略

ということで、国内はよりニッチな趣味性が高く、高級趣向路線になりつつある。

恐らく国際的にもこの方向性は同じなのだろうが、需要量が圧倒的に違う。

 

その方向性に乗ったINSTAXやGFX100をはじめ、X100VIも大ヒット。

加えて、需要が旺盛な海外への供給量を増やしつつ、元々の需要が少ない国内は余剰在庫が出ないよう管理することで、供給量を最適化した。

 

そして、振り返ってみるとフジ製品ラインナップや売り方の方向性はやっぱり当たっていそう。

富士フィルムホールディングス(株) 2024年3月期 決算説明会資料より引用

富士フィルムの各セグメント中、24年3月期で一番稼いだのは、以外にもイメージング事業だった。

結果としてもフジの戦略は当たったのだろう。

 

ここまでを踏まえて富士フィルムニ思フコト

まず第一に富士フィルムの株を買っていたらきっと喜んでいただろうということ。

この縮小しつつあるカメラ業界の中でしっかりと利益を出し、稼ぐ力を生み出す戦略は称賛に価すると思う。

写真機としての在り方を再度見つめなおされ、性能進化をしながらサイズダウンも果たしたX-T5も売り上げに貢献しているはず

加えて、国外と国内の需要の差を考えれば、今の売り方は非常に合理的だろう。

車だって、基本的に海外の需要が多く、しかも一大マーケットの北米は在庫を置いてその場で売るというまさに「家電的な」売り方が基本。

しかし、日本は受注生産方式が基本だ。

そもそもマーケットによって売り方を変えるという形は、全然ありだと思うし、人口減の国内市場を考えればその方が良いと思う。

 

そして、なるべく値引きを抑えて機種の価値を高めるという考え方は、機種の人気が落ちにくく、ユーザーが新機種への乗り換えをしやすく(下取りが高くなる)なるだろうし、嗜好品としてのカメラの在り方を再定義するという上でも有りだと思う。

となると、在庫を常に用意しておくという売り方から脱却するというのは、個人的には全然納得できる。

 

しかし、その先にある富士フィルムのブランドとしての在り方は「ライカ」のようなブランドなのだろうか?

1つの製品が末永く愛されるようなカメラブランドを目指したいということなのかな?と勝手に解釈したが、これは富士フィルムからの正式なブランドステートメントを待ちたいと思う。

確かにレンジファインダーのラインナップは充実しているけれど…

でも、仮に1つの製品が末永く愛されるようなカメラブランドなのだとしたら、顧客への納期の提示や修理対象機種の範囲拡大はすべきなのではと思う。

大きくまとめると私は下記2点が改善されるのならば良いなとつくづく思う。

 

・国内は完全受注方式にして「今注文で何ヶ月先に入手できるのか」を明示する。

・2世代前になっただけで終わってしまう修理対象機種もせめて3世代くらいは広げて欲しい。

 

実際私の使うX100Fは、ハイブリッドファインダーが故障してしまったのだがもう修理受付不可なのだ。

かといって新型のX100VIはいつまでたっても納期不明だ。

最近登場頻度が急に落ちたのはハイブリッドファインダーの故障のため...

今使っている機種を愛していくにしても修理できない、新しい機種を買おうにもいつ手に入るか分からない、それではせっかく向かおうとしている方向性に説得力と一貫性が無いように見えてしまうと思う。

 

私が富士フィルムに移行したのは、こうした時代の移り変わりの中に道具としての良さを追求するという変わらない点と、ドラスティックに方向性や攻め方を変えていく企業としての在り方に共感したからだ。

ぜひ、良い点はそのままに新たな筋の通った将来像を見守っていきたい。

 

素人の雑文でございますが、長文失礼いたしました。

 

では、本日はここまで。